喜び
近頃、もらう喜びは知っていても、その他の喜びをあまり味わっていない子どもが増えているように思えてなりません。
その他の喜びとは、与える喜び、分け合う喜び、そして自分で物事をやり遂げる喜びです。
マザーテレサがこんな話をなさいました。カルカッタの街に、八人の子どもを抱えてお腹を空かしている家族がいたので、お弁当を作ってもっていったところ、その母親は押し戴いて喜んだ後、すぐどこかへ出て行きました。やがて戻ってきた母親は、「実は隣の家族も、このところ食うや食わずの毎日だったので、半分あげてきました」と言ったそうです。マザーはこの話をしてから、「貧しい人は偉大です。飢えを経験した人には、他人の苦しみもわかるのです。」と言われました。本当の豊かさとは、このように、他人にも与えるものを持っている心を指差すのですね。
最近、自分でやり遂げる喜びを、子どもから奪っている過保護の親も増えているようです。それは、子どもたちを愛しているように見えていて、実は彼らから、その成長に必要な自信と自立の喜びを奪っているのです。
もらう喜びしか知らない子どもは、自分中心の世界で生きています。どれほど多くの物を持っていても、その子の心は貧しいのです。与える喜び、分かち合う喜びをも味あわせることによって、子どもの生活を本当に豊かなものにしてやりましょう。 渡辺和子著 「忘れかけていた大切なこと」より